イメトレで混乱を理解に導ける

私たちは時に公私である出来事に混乱して対処の困難に陥ります。例えば仕事で上役の言葉に混乱して仕事の手が止まる。プライベートで知人や家族の言動に混乱してその対応でお手上げになる。もちろん相手の出方次第でその混乱が落ち着く時もありもする。他方、自分だけの混乱にも出会う。

その1つは試験勉強で法令や算法を学習している際に生じる。例えば、建築学科卒後2年を経た実務経験から一級建築士の取得を目指して試験勉強中のS君。彼に散見される混乱は例えば法規の記述を読解しようする時に到来する。

この記事は資格試験の合格を目指す皆さんの一助として次の書籍を参考に記しました。
参考文献:Richard Bandler. Using Your Brain for a CHANGR(p83_101)

勉強での混乱とは

S君が混乱するその1つは内装制限。例えば防火区画と内装制限の関係を規定した法文の読解を試みる度に混乱を覚える。ましてや防火区画や防煙区画そして避難経路に関わる内装制限に関わる問題解法の解説を理解するに及んで全くもって混乱に陥る。「このままじゃ合格はムリだ」と目標達成の困難に直面する。

彼は内装制限を理解するのに必要な建築基準法の冒頭に規定する用語の定義、つまりその為に必要な情報を把握している。法文の意味に関わる接続詞等の機能語の働きも心得ている。このように何らかの情報不足から理解できない。そうではなくて混乱しているのです。この様に混乱と理解できないは違います。

混乱と理解できないはどう違う

もう少し情報や知識の不足による理解できない例を見て見ましょう。例えば、多くの人は人工知能を語彙として知っています。一方で論理や統計そして確率等の数学的な情報を持たない故に人工知能の成り立ちを理解できません。同様に解剖学の知識がないために脳外科手術の過程を理解できません。

ですから混乱と理解できないはとても違います。後者は理解する為に資する情報を持っていないのです。例えば、建築基準法の内装制限についてまだ知識不足から理解できない受験生は、混乱を理解に導くイメトレの仕方を次に学んで理解できるようになろうとするよりも、法的な用語や法文読解に役立つ接続詞などの情報をまず持つ方が得策です。

イメトレの前にやるべきこと

1日の中で勉強に使える有限な時間の中、理解できない状態は勉強をすることで理解できるに必要な情報や知識を持つことでこの状態を解消できれば、新たに時間を要するイメトレなどを行う必要がない。受験生として普通に勉強する事で対処できるに越したことはない。合格する為の勉強すべき対象は数多あるのですから。

他方、一級建築士の法規などで知識を有しながら直面していた混乱を理解に転じことで合格点も確実に得られる人は、それで更に得点できるようになれる。総点を多くできれば、その相対評価で決まる建築士の合格が確実になる。その為には、他の受験生たちもよく混乱しがちな高さ制限や換気や採光そして排煙に関わる開口などの法文をも確かに理解することが大いに役立ちます。

但し、S君に限らず他の受験生も勉強する際、相応の知識を有しながらも直面する混乱に対処することは容易くない。「その内なんとかなるさ」とその状況を放置していても資格試験で合格を目指し難い。この種の混乱は読書百遍式の勉強論で決して解決できない。しかし、それなりに知識を有する人が時に遭遇する混乱は常に理解に向かう1つの兆候です。仮にそうだとしたら、その人はどんな方法で混乱を理解に導けるのできるのでしょうか。

結 論

その方法が一種のイメトレ(英語でvisualization training)。NLPの感覚的な副要素を介して混乱を理解に導いてくれます。普段、無意識な視覚や聴覚に関わる要素に基づいてステップを踏みますが、誰もが普通に使っている感覚なので少しコツを掴めば簡単にできます。

このイメトレは次の段階を経て進めます。
1.2つの事を思い浮かべる
2.相違点を調べる
3.混乱を理解と同じに変えてみる
4.検査する

何だか面倒臭そうな段階を進む理由は、情報や知識を有しながら直面する混乱と理解している状態との違いが両者に於ける情報や知識に関する組織化の相違、つまり混乱と理解を表象するイメージの違いです。その違いについて前者のイメージと後者のそれとを対照分析する。分析結果から前者のイメージを後者のそれに合わせる。そうした試行錯誤に基礎付いて混乱を理解に導く為です。

イメトレで混乱を理解に導けるステップ

2つの事を思い浮かべる

まず混乱していること。次に混乱の分野と似たような分野で理解している経験です。但しそれらの「内容」を事細かに思い描けないても大丈夫です。例えば、建築基準法の高さ制限で、混乱している斜線制限と理解している日影規制とを自分なりに思い描ければ良いのです。

または構造の解法で混乱しているたわみ角の算定法と理解しているたわみ値の計算法です。以下の段階を円滑に進める為に大切な事なので、もう一度繰り返します。それらの様にここで思う分野は似ていながら一方に混乱していて、もう一方を理解している経験です。

相違点を調べる

混乱と理解の経験はどのように違うのかを調べます。その経験とは先で思い浮かべて覚える次の様子です。視覚的な要素や聴覚的なそれで双方はどのように違うのか。その感覚的な要素にある違いから次の段階を進められるように、2つの経験を事例のように感覚的な要素毎で[ ]の中に数値で記録します。

記入例です。見え方で混乱が小さいならば[]に目安で2、理解が大きいならば同様にして8と記録します。聞こえ方で混乱が音声を持たないならば同様に[ない]と、理解が音声を持つならば同様に[ある]と記します。
 その記述は正確であろうとするよりも違いの解る状態の方が混乱を理解に導く段階に有用です。

混乱を理解と同じに変えてみる

混乱と理解に関して、先に記録したそれぞれの感覚的な要素の数値を見比べる。そうして2つ以上の相違点が見つかった場合、混乱のそれらを理解のそれらと同じように変えてみる。例えば混乱は小さくて不鮮明、理解は大きくて鮮明ならば、前者を後者の様に大きく鮮明にイメージしてみる。

勿論先の相違が2つだけの状態は少ないでしょう。仮に表象の大小と動きの有る無しそして音声の有無と例えば3つあった場合、それから2つを混乱から理解へと変える組みあわせは3通りです。相違点が4つならば、12通りにもなります。組みあわせの数が何れであっても、様々に2つ以上の違いを変える試みがこのイメトレの核です。

検査する

その様にイメージしてみて、混乱していたことが理解できたと思えるか否か自分の状態を止まって観る。もし理解できたと思えたらそれで終わる。理解できていなければ、相違点を調べる段階に戻り、他の違いを見つける。見つけた違いについて前段とここでの検査をする。そうしていると次の経験ができます。

1つは先の繰り返しで混乱を理解に導いた感覚的な要素の転換に出会える。混乱していたことが理解できたようになれる。もう1つは自分の完全な理解を妨げていた情報不足を特定できる。その不足を満たして理解ができるか、そうしてもまだ混乱しているなら相違点を調べる段階からここまでを試行する。以上で混乱を理解に導けます。

但し、そうして導けた理解は実際にこれが機能するか否かをテストすることは、これを勉強で有用な理解に深める為に大切です。例えば、試験勉強の事例で見たような法令に関わる理解はこれを実際に機能するようにできたのかを、例題や過去問を解いた結果の正誤を介して確認する。この行為が試験勉強で核となる理解をイメージだけのこれでなく試験対策に有効な理解に導くからです。

上記の理解を現実的な場でもテストすることは、試験勉強に限らず、仕事やプライベートにおける様々な場面で大切な行為であるはずです。イメトレ的に導けた理解に限らず何かに対する理解は検証してみないと、これが単なる主観的な理解で客観的に混乱かもしれず、新たな困難をもたらし兼ねないからです。

理解について

以上はイメトレ的に混乱を理解に導く方法でしたが、何に対しても完全に理解ができる場合などいない事実を心の掲示板にピン留めておくことはとても有用です。何でも完全に理解できない事は決して悪くない。完全に理解できない認知を理解しているメタ認知を前提とする「もっと理解したい」好奇心を旺盛にします。

そう言えばこんな情景が心に浮かびます。恋愛ドラマでよく展開される2つのシーン。あるカップル、男性が出来心で浮気?!をしてしまう。「貴方がどんな人なのかよく『解った』わ」と女性が男性に声を荒げてこのカップルは冬を迎える。

他方、素敵な雰囲気の海辺で出会った男と女。「互のことがもっと『解った』ら素敵!?」と謎めいた会話からこの出会いに春が訪れる。人間関係でも混乱と理解の織りなす綾は人生を多彩に彩るようです。