神経とは

NLPの神経とは、医学的な概念と異なるNLP流の呼び方です。視覚神経や聴覚神経、触覚神経など感覚に関する神経系統の総称です。その適否はいずれにしても、NLPの創始者たちは神経を主に3つの感覚(modality)に分けました。

NLPを専門的に学ぶ場では、「内部対話」を1つの感覚として加えますが、「聴覚とどう違うか分かんない」と混乱を招くので割愛します。それらを例えばある人が1つの経験に関して「暗い過去」と認識したり、ひとつ予測に対して「明るい未来」と感じたりする主観的な内部体験(例えば内面で見る絵)の構造や我々の意思疎通の仕組みを探求する手がかりとして次に挙げるより詳細な副感覚(Submodality)に具体化して研究してきました。

注記:ここで「副感覚」としたSubmodalityは多くのサイトで「サブモダリティ」と表記されますが、これを初めて目にする方により分かり安さを提供できると考えたこと、また四半世紀前にNLPを専門コースで学び始めた頃にカタカナ表記に分かりにくさを覚えたこと、「明るい感覚」「重たい感覚」とした言葉使いのあることから、以上を顧慮して直訳的な日本語表記としました。

  • 視覚
  • 聴覚
  • 体感覚

視覚の副感覚

視覚のそれは代表的なもので以下のように細分化されます。「で、それがどうしたの」とは有用な質問です。実験してみましょう。

例えば楽しかったことを思い出して下さい。次にその思い出の明暗を今より暗くしてください。多分、その印象がガラリと一変したはずです。

暗くした思い出は元の明るさに戻してくださいね。戻し忘れると、楽しかった思い出が別の思い出になったままで勿体ないことになってしまいますから。

視覚の副感覚リスト

  • 連続的に変化する副感覚
    • 明 暗:明るい・・・暗い
    • 差 異:鮮明・・・不鮮明
    • 位 置:左・・・右、上・・・下、遠・・・近
    • 大きさ:大・・・小
  • 二値的(電源スイッチのオン・オフ的)に変化する副感覚
    • 色合い:有彩色/無彩色
      • 有彩色は混合した三原色として連続的に変化する
      • 無彩色は白から黒まで連続的に変化する
      • その2つは内部体験として二値的に変化する
    • 動 き:動 画/静止画
    • 視 点:主 観/客 観
      • 主観は自分の目を通して視る
      • 客観は他人の目を通して自分をも視る

もう一つの実験をしてみましょう。例えば、誰かと言い合いになった経験を思い出して下さい。多分、相手の姿・顔が思い浮かんでいるはずです。次に、なんとなくでも良いので、相手の肩越しに見えるだろう自分の姿・顔を想像してみましょう。

「えっ、それって無理」と感じるかもしれませんが、大丈夫。顔を洗ったりメイクをしたりする時に鏡で自分の顔を見ている時を思い出しましょう。そうして、先の出来事を主観から客観に切り替える訳です。すると、「こんな人の話を誰が聞くの」と自分の言い草に対する感覚が豹変したかもしれませんね。

2つの実験で分かるように視覚その副感覚は、これの1つを変えるだけでこれに関わっていた思い出の新たな再体験を生成します。人の内部体験つまり脳の働き(思考や感情)を変える感覚的な属性です。これを意図して操作するいわゆるプログラミングすることの有意性を私たちに示唆しています。

聴覚の副感覚

聴覚のそれもリストのように細分化されます。例えば、ある失敗を「あれって・・・」とグチグチ責めて自分をネガな気分にする心の声が聞こえるとしましょう。その声が低くて小さいならば強い暗示効果で持ち主をして嫌な気分にさせます。

仮にそうならば望ましい変化を得る為に副感覚を変える実験をしましょう。気分をポジに変えるにはその原因だった声色をアヒルのような高い大きめの声に変えてみます。声の内容よりも質の滑稽さが際立つようになって負の暗示効果を解消できます。

聴覚の副感覚リスト

  • 連続的に変化する副感覚
    • 音 量:大きい・・・小さい
    • 周波数:高い・・・低い
    • 速 度:速い・・・遅い(例えば話し方の早口からゆっくり)
    • 位 置:左・・・右、上・・・下、遠・・・近
    • 明瞭性:はっきり・・・ぼんやり
  • 二値的(電源スイッチのオン・オフ的)に変化する副感覚
    • 立体感:ステレオ/モノラル
      • ステレオ:立体的
      • モノラル:平面的
    • 言語感:言葉/環境音(非言語)

日本語は外国が環境音つまり雑音とするような例えば雷の音を「ゴロゴロ」や風の音を「ヒューヒュー」とオノマトぺ・言葉として取り扱う(これは日本人の脳が例えば「リーンリーン」と虫の音をオノマトぺで表現することから言語として処理する)ことで私たちを多彩な想像に誘います。

例えば、「夏のある夕方、ゴロゴロ、ヒューヒュー、ザーザー、ガラガラ、トン、ピシャン、と近所から音がしたのです」と表現することで、私たちはその情景を鮮やかに想いえがけます。環境音を言葉にすることは深い内部体験を生成する。環境音か言葉かの二値的な違いは、内部体験の違いを創る違いとして作用する訳です。

体感覚の副感覚

大感覚のそれも同様に以下のように細分化されます。体感覚の位置についてひとつ実験してみましょう。例えば、手先に感じる暖かさが逆の手先まで広がる様子を想像しましょう。

更に、両手に広がった温感がお腹や足先にまで及んだ様子まで想像を広げてみましょう。そうすることで気分がずいぶんと変わる内部体験を生成できることが認知できます。

体感覚の副感覚も内部体験の構造を探求する要素として有用な訳です。

体感覚のそれも同様に以下のように細分化されます。

体感覚の副感覚リスト

  • 連続的に変化する副感覚
    • 触 感:ツルツル・・・ざらざら
    • 温 感:暖かい・・・冷たい
    • 重量感:重い・・・軽い
    • 圧 力:強・・・弱
    • 範 囲:広い・・・狭い
    • 位 置:上・・・下、右・・・左、前・・・後ろ

体感覚の温感、冷たさでもうひとつ実験してみましょう。この実験は目の疲れを覚えた時にお勧めです。目を閉じたらイメージすることは、心地よく冷えた清流がまぶたの裏をサラサラと洗い流してくれる様子。次は目の奥を同様に洗い流してくれる。市販の目薬のような強すぎる冷たさでなく、柔らかく心地の良い冷感が左右の目、その全体に広がって行く。目を開けるといかがだったでしょうか。魔法の目薬でもさしみたいな感覚を覚えたかも知れませんね。体感覚の副感覚も内部体験の構造を探求する要素として有用です。

違いを創る違いで貴方も変われる

以上、3つの副感覚に関する実験はいかがでしたか。例えば「それってやったことないから無理」と感じたかも知れません。しかし、副感覚を変えることは少しずつ試すことで、別に専門的な学習の場に足を運ばなくても、これをできるようになれます。「へーっ、なぜそう言えるの」とはこれまた良いご指摘ですからお答えしましょう。

上記でこれまでに実験してきたものは、これに応じて主観的な体験と言う舞台に立つ役者の思考や感情を覚える。その結果としてある行動を演じる「私」という主人公の身振りを変えました。仮に貴方は舞台の演出家だとしましょう。視覚的な副感覚の1つ明るさを舞台設備の1つである照明装置のスライドスイッチで暗くしたり明るくしたりすることができるとしましょう。一方で主観的な体験という舞台に立つ役者でもあると想像してみましょう。

明るさの変化に応じて演出家の分身である主人公の「私」は舞台(主観的な内部体験)の状況に応じて「暗い時って嫌だ気分が滅入る」「明るい時って好き気持ちが晴れやかよ」と思考・感情を変える。結果として明るく振る舞ったり暗く振る舞ったりする。主観的な体験という舞台に立っている私たちは副感覚の操作という筋書きで自作自演ができる演出家兼役者なのです。

ご案内した実験は、感覚の違いを創る違いである副感覚を意識するしないのいずれにしても操作する(プログラミング)ことによってネガな主観的体験を別の体験に変えた多くの人達、彼らをNLPの創始者が調べた結果から分かった有用な方法でした。私たちも同じ人であることから、「あの人ができることは自分もできる」と考えたらどうでしょうか。副感覚を変える方法は貴方も変われる脳の使い方と言えます。投稿を予定しているプログラミングの項でこれの代表的なものをご紹介します。

「だけど、演出家兼役者のアタシたちって思い通りになれないの?」

確かに、そうなることは鋭いご指摘の通り。素直に認めましょう。実は深い訳があります。
それが言語なのです。「NLPの言語とは」と題した項で説明しましょう。