大前提。目標は夢と違う。例えば「スリムになりたい」と言うのが夢だ。「今年はスマートになるの」と言いながら三箇日を過ぎる頃にそれをすっかり忘れて高糖質な食べ物を頬張るような思いだ。対して「○月末までの5ヶ月で、体重を10㎏減量」と本人のこれに向かう意欲や行動を誘う考えが目標だ。両者は明らかに異なる。
「エッ、夢を持っちゃ駄目ってこと」とお怒りの向きもあるだろうから補足しよう。それは決して駄目ではない。夢は人生に彩りを与えて豊かにしてくれるのだから。駄目ではなくて、思い抱かれた夢が忘却されやすいことが勿体ない。その夢がかなえられ人生が上質になるように、夢を目標に転じることを以下で提案したい。
夢を目標に変えるコツ
それは上記の事例で既に示した。夢はこれが叶えられる期限と叶えられるべき内容が具体的(つまり誰が見ても分かる客観的)に記述することでこれを目標に変えられる。具体的や客観的と聞くと難しそうだが、換言すれば目標として目指す内容を数値として測れる測定可能な表現にすることだ。
上記に関して、皆さんはどのような考えを覚えるだろうか。なるほど「オレ・アタシって自分の目指している事って分かっているんだから、期限や測定可能って必要なくない」とお考えだろう。しかし、双方が数値として表現されることは、目標に転じた夢をオレやアタシが叶える為に必須である。
期限は強力な効果
まず、期限がない対象は人の先延ばし癖からしてほぼ達成されない。例えば「そのうちで良いからあのレポート出して」と言われたモノはその多くが日の目をみない。対して「締め切りが明後日のあれってどうなった」と言われる期限付き物事は、貴方の目つきを変えさせ必死の打鍵をキーボードに行わせる。
期限、締め切り即ちケツを切られることは人をして大いに行動たらしめる。事実、勉強嫌いの人でも、定期試験というケツが近づけば、最悪で明日だとすれば、赤点つまり落第の怖れを覚えて必死の詰め込み勉強をする。つまり期限は人がこれがついた対象に対して行動を起こす様に強力な効果を発揮する。
具体的なことの有用さ
次に具体的つまり測定可能にすることは、期限と相まって目標に転じた夢を叶えることに私たちを大いに駆動する。例えば、「2週間後に良さげな企画書を出して」と指示されたらどうだろうか。「何をどう書いたらいいのか分かんない」とやるべきことを想像できずに手を動かせないのが人情というものだ。
しかし「2週間後に10ページの背景やデータそれに売上見込みの想定までした企画書を出して」と言われれば、「休日出勤なしなら実働10日で最低でも一日に2ページ書かなきゃ」と頭が回り始める。「そのうちボチボチやるか」と決してならずに否が応でも自然とやる気を出せるのが人心だろう。
加えて、測定可能な表現で目標を設定すると、期限に対して後は何をどれだけなすべきかを自らが判断できもする。その判断から設定した目標の達成に困難を覚える場合、その表現は客観的であるから他の人も認知できる。「データを2ページお願い」と周囲の援助も得やすい有用さがある。
夢を目標に変えられる枠組み
では、夢を目標に変えてみよう。その事例として健康や美容の観点から多く衆目を集める体型のスリム化をとりあげる。それを夢から目標にするには最低でも達成の期限とその内容である2項目で表現する。そうして設定した目標が夢のように消えることを防ぐ為に必要なことが3の視覚化、特に紙に書くこと。
ここまでを体型のスリム化を例として下にまとめる。
夢を目標に変えるには次の三項を行うのだった。
1.期限を決める:達成日は○月○日
2.目標の内容を数値にする:○㎏減量して体重○㎏になる
3.目標は1と2との記述を併記して紙にかく
目標を紙に書くことの効能
「スマホやパソコンじゃ駄目?」とお考えだろう。勿論その思いは拝察できる。だが小さくても良いのでノートや手帳に目標を書き付けることを強く推したい。携帯できて確認しやすいからだ。スマホやパソコンは目標の期限や数値を確認したい見たい時に電源を投入しなければ直ぐに見られないからだ。
加えて、特にスマホは目標の確認を妨げるお知らせ通知やアプリのアイコンといった視覚的ノイズが多すぎる。目標を確認するつもりの貴方がウッカリSNSの沼にハマってしまう事態に陥れがちだ。加えて目標のデータを探し出す手間が貴重な資源である集中力を妨げて「また今度」と先延ばしをさせるからだ。
バージョンアップした目標設定の枠組み
「目標設定って3つだけで良いの?」と向上心に満ちた方はご懸念かもしれない。だとすれば、もう少し詳しい目標設定の枠組みをご提示するのが話しの筋目であるだろう。幾つかある中から「SMARTの原則」を一例として目標設定を進める際に役立つ枠組みを以下にご提示する。これは以下のように5つの項目から構成される。
Specific(具体的): 誰でも分かるように具体的に記述する
Measurable(測定可能): 数値化された目標にする
Achievable(達成可能): 達成できる目標にする
Relevant(関連性): 目標が自身の価値観と合致する
Time-bound(期限がある): 達成期限を設定する
達成可能と関連性にご用心
体型スリム化の目標に限らず達成可能と関連性に注意することは目標を達成する際に必要だ。まず達成可能はできないことを設定しない。そうではなく期限を勘案してやれば身を破滅するとこなくできる対象を目標にする。例えば、1ヶ月で10㎏の減量は下剤や絶食を使ってでもやれば可能だが大方は健康を害する。要注意だ。
次に関連性は目標の達成が自らの価値観に合う事だった。体型スリム化の目標が、例えば「スリムになってアノ豚どもを見下してやろう」と悪意に根ざした目標はこれを叶えた本人をダークザイドに引き入れるので危険だ。そうではなくて「スリムになって美しく健康でいよう」と自らの相応しい価値に沿わせよう。ご用心である。
結 論
以上を体型スリム化の事例としてマインドマップで以下にまとめる。但し添付画像の各数値は1つの事例である。先のSMARTの原則でそれを目標として設定した。加えてここでマインドマップが得意とする継続力の維持を可能にするアイコンを使う印象的な視覚化を導入している。始めての方はマインドマップの書き方を参照されたい。
目標達成の為に必要な行動の維持を可能にする継続力が減衰する大きな原因の1つは、目標それそのものを忘却しないまでも、目標のイメージがあまり印象的でないことによって、それを折に触れて意識することを疎かにしてしまう状況。その状況を解消する為に、前述の印象的な視覚化(これは記憶術の技法でもある)を用いた。
一例として次の方が体型スリム化の目標設定をしたと仮定した。
・女性、25歳、大卒、総合職
・現状:BMI 25、体脂肪 29%(軽肥満直前)
・「ギリ平均以内だけど最近はかなりお腹周りがキツい」とお悩み
(健康的な減量の指標として、その中から2㎏/月を採用)
マインドマップの左側はご覧の様にSMARTの原則を確認事項として採用した。前者の右側は、後者の原則に沿った目標の具体化つまり測定可能、達成可能や関連性、期限の設定を行っている。体型は「くびれが見えたら良いかも」と抽象的で達成可能性を下げるような様子に止めずスリーサイズまで具体化した。スリム化の方法もその指標を立てた。これらにより、目標達成をより現実化しやすくする行動計画の立案も容易になるのだから。