これは耳慣れない響きでしょう。メタとモデルの組み合わせです。メタは高次を、モデルは言葉がある対象の代理であることを、それぞれに意味します。メタモデルは高次の代理、いわばモデルのモデルです。意思疎通の達人たちの話型つまり言語モデルを研究してNLPの創始者が抽出した高次の言語モデルです。
抽象論は以上にして事例をみてみましょう。例えば、試験勉強に関して「オレ・アタシって計算問題はみんな駄目」と嘆く人(自分)がいるとしましょう。
その人に対して、「計算問題のすべてがそうなの」「いままでしてきた試験勉強の計算問題がひとつ残らずそうなの」と問いかけます。つまり「計算問題は『みんな』駄目」とした言語つまり考えが有する『みんな』とした制限的な考えに妥当性の検討を求めます。すると、「それって『みんな』じゃなかった」「構造計算の3割くらいだった」と例外に気づけます。話者は自らの能力に広がった認知を得ることができます。
事例の様にメタモデルはある話し方が蔵する傾向に対して有用な問いかけの話型としての対策です。
話者に対するこの働きを列記すると以下のようになります。
- 情報を収集する
- 意味を明瞭にする
- 制約の認識を促す
- 選択の幅を広げる
上記の作用は話者が無意識に有する思考の制限を解放に転じることが目的です。
これを話型で類別すると大きく以下の3つの問いかけに分類できます。
- 省 略:言い落とした情報・言葉の復元を助ける
- 一般化:不適切な帰納のような制限的な規則化の検討を求める
- 歪 曲:偏った同値や因果、意味づけなど歪んだ思考の修正を援助する
3つのそれぞれは固有の傾向を持ちます。併せてその対策を以下に紹介します。
省略
- 不特定名詞
- 事例:「勉強が苦手」
- 傾向:「勉強」と「苦手」は不特定の名詞だからこれの解決が困難
- 対策:「勉強って具体的に何が」「苦手ってどのように」と情報を収集します
- 判断
- 事例:「オレ・アタシはまた不合格かも」
- 傾向:判断した人とその根拠が省かれて打開策を見つけ難い
- 対策:「誰がそう言うの?」の答えが私なら「何を基準にそう言えるの?」と情報回収をします
- 名詞化
- 事例:「勉強は理解と記憶だ」
- 傾向:どの言葉も進行する事象を表す動詞が名詞になり具体性に欠ける
- 対策:「勉強、理解や記憶ってどうすることなの?」と聞いて省かれた動作とその目的を特定する
一般化
- 可能性の除法助動詞
- 事例:「勉強できない」
- 傾向:この発話者が持つはずの可能性をその状態に制限する
- 対策:「何がそうさせるの?」と問うて勉強の障害を明確にして解消策に目を向ける
- 必要性の叙法助動詞
- 事例:「今夜も残業をしなきゃならない」
- 傾向:それをすることをさも一般的な規範のようにして選択肢を狭める
- 対策:「もしそうしなかったらどうなるの?」とただすことで選択と行動の幅を広げる
- 普遍的数量名詞
- 事例:「法規は難しい」
- 傾向:主語は普遍的にそう形容できるとして例外を認めずにとりつく島を与えない
- 対策:「どれもがそうなの?」と質問することで例外に視点を移せて可能性を広げられる
歪曲
- 等価の複合観念
- 事例:「こんな過去問が解けないことって不合格を意味するな」
- 傾向:前文と続く言明とがさも当然であるかのように同値とされ他の可能を制限する
- 対策:「どのようにして前のことが後のことを意味するの」と聞いて過度な結合をほぐす
- 前提
- 事例:「もう勉強しないから、ゲームをしようかテレビを見ようか」
- 傾向:後の選択を許す一方、前の前提を当然のように受け入れてしまう
- 対策:「どのようにして、そうしないの?」と対抗してそうする可能性を広げる
- 因果
- 事例:「構造の科目にはうんざりだ」
- 傾向:前と後がさもそうであるかのような因果で繋がって話者の認識を狭める
- 対策:「前が具体的に後の原因になっているの?」と他の原因(可能性)も認知することを促す